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福井ひかり法律事務所の弁護士によるコラムです。

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市民のための司法の実現に向けての提言 その1 −パラリーガルの国家資格化と養成機関の設立−

市民のための司法の実現に向けての提言 その1
−パラリーガルの国家資格化と養成機関の設立−
 
1.弁護士業務の実情
2.「2割司法」の現実
3.私の提言
4.医療の世界/裁判所では
5.法律事務所では
6.パラリーガルの国家資格化と養成機関の設立に向けて
 
1.弁護士業務の実情
 
弁護士を扱う映画やテレビドラマでは、放送時間の多くが裁判や現場に行くシーンに充てられてることもあり、弁護士が裁判所や現場で「華やかに」「かっこよく」過ごしているというイメージを持たれる方もいらっしゃると思います。
 
たしかに、現場には頻繁に行きますが、ドラマとは異なり、裁判所で過ごす時間は全体の中では非常に少なく、依頼者との打合せ、法令や裁判例の調査、証拠の収集と分析、依頼者・相手方・裁判所宛の文書作成にほとんどの時間を費やしています。弁護士は、地味な作業をこつこつ慎重に積み重ねる「地味な」職業であり、自分で言うのは全く「かっこいい」ことではありませんが、かなり労働時間が長い職業です。患者の生命や健康という替えのきかない、取り返しのつかない重要な利益を守るために医師にミスが許されないのと同様、依頼者の権利利益を守るために弁護士もミスは許されないからです。
 
2.「2割司法」の現実
 
かつて、「2割司法」という言葉が良く取り上げられました。これは、「法と事実」に基づいて解決されるべき事案のうち司法による解決がされるのは2割だけであるという、司法へのアクセス障害の大きさを指す言葉です。しかし、仮に司法による解決が、‘睛董↓▲好圈璽鼻↓H駘僂量未如◆屬Δ泙ぁ∩瓩ぁ安い」であれば、多くの方は司法による解決を望まれるはずですから、司法の側も問題があるはずです。私個人は、司法による解決の▲好圈璽匹鉢2然覆蓮課題が大きく、改善すべきだと思っています。
 
3.私の提言
 
このような課題の解決に向け、私は、
・「弁護士が弁護士にしかできない業務に時間を集中することを可能にする制度」と
・「それを是とする社会意識」
が必要だと考え、これまで、さまざまな場所で、次の4つの提案をしてきました。
 
(杆郢里諒篋瓦鬚垢覿般海妨的資格を創設し、法的にも一定の権限を付与すること
∧杆郢糧駘僂砲弔い童的保険制度を創設すること
裁判の進行やステージに応じて箇条書きや図表を用いた簡潔な書面を導入するとともに、裁判官が随時争点や立証の要否を示すこと
ぬ瓜裁判期日に、依頼者本人が自宅や会社から直接インターネットで裁判期日に出席できるようにすること
 
今回は、このうち「弁護士の補佐をする業務に公的資格を創設し,法的にも一定の権限を付与すること」についてお話しします。
 
4.医療の世界・裁判所では
 
医療の世界では、医師・歯科医師のほか、多くの医療専門職(※1)が存在し、業務範囲が法律で裏付けられています。そして、「チーム医療」(※2)追求のため、看護師をはじめとする医療専門職が行える業務範囲を拡大すべきという議論が社会的な支持を得るに至っています。
 
※1 保健師助産師看護師薬剤師診療放射線技師臨床検査技師救急救命士歯科衛生士視能訓練士言語聴覚士臨床工学技士義肢装具士理学療法士作業療法士など
※2 ここでは「多種多様な医療スタッフが各々の高い専門性を前提に目的と情報を共有し業務を分担しつつも互いに連携・補完し合い患者の状況に的確に対応した医療を提供する」ことを想定しています。

また、司法の世界でも、裁判所には、裁判官を補佐する者として裁判所書記官や家庭裁判所調査官という国家試験を有する専門職が存在します。そして、多数の法改正を経て、裁判官の権限が裁判所書記官に移譲され、裁判所内の役割分担が図られるようにもなっています。
 
5.法律事務所では
 
他方、法律事務所の事務員が行える業務の範囲に法的な裏付けはありません。半面、弁護士以外が報酬を得る目的で法律事務を取り扱うことを制限する弁護士法72条の規定は、法律事務所の事務員にも適用があります。
また、依頼者側にも、法律事務所の事務員は一般事務を行うものであり、案件に関する連絡は全て弁護士に直接対応してもらいたいというニーズがあり、社会的にもそのような認識が強いと思います。
 
アメリカや日本の大手法律事務所では、弁護士資格を有しないが専門的知識と技術で弁護士業務を補佐する事務員を「パラリーガル」と呼んでいます。
弁護士人口が多いアメリカには、パラリーガルを育成する専門の高等教育機関も存在しますが、日本ではそのような機関はなく、個々の法律事務所が採用の後に事務員を育成しています。
多数の弁護士が在籍する都市部の大手事務所であればともあれ、地方の多くの法律事務所では事務員の育成には時間と根気を要しています。
 
6.パラリーガルの国家資格化と養成機関の設立に向けて
 
もし、多くの弁護士が事務員養成のために使っているこの時間を案件の処理に使うことができたら、「弁護士が,司法的解決に真に必要で,かつ,弁護士にしかできない業務に時間を集中すること」が可能となり、クライアントに対してより早く、よりリーズナブルに法的サービスを提供することができるはずです。
最近では、日本でも弁護士人口が急速に増えていますから、パラリーガルを養成する専門の高等教育機関を作ることも経済合理性が出てきているのではないかと思います。
 
併せて、「法律事務士」などの国家資格を創設し、「弁護士が、司法的解決に真に必要で、かつ、弁護士にしかできない業務に時間を集中すること」を実現し、もって、依頼者がより早く、よりリーズナブルに法的サービスを受けることができるようにすべきだと思います。具体的には、裁判所において裁判所書記官の権限とされている事柄に対応する事柄は、法律事務所では一定の専門的知識と技術が担保された事務員が行える業務であるべきと考えています。
 
法改正をすぐにすることは困難かもしれませんが、利用者たる市民にとってより良い司法の実現のため、現行の制度の枠内でも社会的議論を起こす必要があると考えています。
 
パラリーガルの国家資格化とその養成機関を作ることは、必ずや市民のための司法の実現につながると確信していますので、引き続き取り組んでいきたいと思います。