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福井ひかり法律事務所の弁護士によるコラムです。

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いじめを社会からなくす

令和5年(2023年)3月15日、福井工業高等専門学校において、教職員の皆様に対する研修の講師を務めてきました。研修の内容は、いじめ防止対策推進法です。
 
私は、令和3年に立ち上がった福井弁護士会のいじめ予防授業プロジェクトチームの副座長を務めており、これまで、福井県から福井弁護士会へ御依頼をいただいて、小中学校におけるいじめ予防授業を行ってきました。また、それぞれの学校から個別に御依頼をいただき、県内の私立高校さん、福井高専さんでの生徒さん向けのいじめ予防授業の講師をしてきました。
 
これまで、児童や生徒さんに向けて授業をする際には、次のことをお話ししてきました。
 ,い犬瓩呂覆すべきであり、なくすことができる。
◆,い犬瓩許されないのは、刑罰や賠償責任があるからではなく、人権侵害だから。
 人権とは、「その人」が「その人」として尊重されること、その人の個性が大事にされること(憲法13条も「すべて国民は、個人として尊重される。」と定めている。
ぁ,い犬瓩蓮∩蠎蠅傷つくことをしているのであり、相手を尊重していないから人権侵害である。
ァ,澆鵑覆人権を大事にすれば、みんなが幸せに暮らせる社会になる。
Α,い犬瓩鯒Ъ韻靴覆らこれまで何もしなかった人(傍観者)がいじめに対して「小さなNO」を送ることで、いじめをなくすことができる。社会全体がいじめに対して「小さなNO」を出し続ければ、いじめはなくなる。
 
他方、教職員の先生方にどのようなお話をするかは、正直悩みました。
 
私は、熱心に研究し、授業をし、真剣に生徒指導をしている先生方を何名も知っています。先生方の多忙さ、プレッシャーの大きさも理解しています。そして、先生方はいじめを社会からなくすためにともに力を合わせていくパートナーでもあります。
 
そんな先生方にとって少しでも実りある研修にしたいと思い、今回は、以下のとおり、お話しさせていただきました。
  1. いじめ防止対策推進法が議員立法であること。
  2. 法の内容が(科学としての教育学や、実践知としての教育現場の知恵やり方からは)不適切な部分があっても、法がルールを設けている範囲では、ぐっとこらえて従ってほしいこと。他方、後述の法が沈黙している部分(9.)は教育学や教育現場の専門家である文部科学省や教職員の皆様の判断が尊重されうること(10.と11.)。
  3. いじめ防止対策推進法の「いじめ」の定義と平成29年までの文部科学省=教育学教育現場の専門家の「いじめ」の定義が大きく異なること。いじめ防止対策推進法の「いじめ」の定義と保護者や社会が「いじめ」という言葉に持つイメージが大きく異なること。
  4. いじめ防止対策推進法は、次の2つの場面を区別していること。場面 Гい犬瓩粒催性やいじめの事実の有無の確認(調査)までの場面 場面◆Гい犬瓩確認された場合の当事者児童生徒と保護者への対応の場面
  5. いじめ防止対策推進法は、被害者と加害者を明確に対置させていること(被害者には「支援」、加害者には「指導」と明確に区別している)。
  6. いじめ防止対策推進法の柱は、学校が必ず、かつ、常に設置する「いじめ対策組織」であること。
  7. いじめ防止対策推進法は、他の法律と同様に、次の3種類のルールから構成されること。Ⓐ:手続に関するルール(手続法といわれるルール) Ⓑ:事実認定方法に関するルール(証拠法といわれるルール) Ⓒ:具体的な対処内容に関するルール(実体法といわれるルール)
  8. 手続に関するルールⒶについては、いじめ防止対策推進法のいじめの定義が広いことを踏まえると、学校や教職員に裁量がないこと。
  9. 事実認定方法に関するルールⒷと具体的な対処方法に関するルールⒸについては、法は、一人の教職員が判断することを禁止し、組織で行うことを求めている。他方、「具体的にどのような対応(支援・指導)をするか」については、詳細を定めていない(事実上沈黙している)こと。
  10. 具体的にどのような対応(支援・指導)をするか」については、文部科学省が策 した「国の基本的な方針」において学校や教職員が柔軟な対応ができるよう配慮がされていること。この点で、教育の専門家としての文部科学省のプライドが感じられること。
  11. いじめ防止対策推進法が沈黙している「具体的にどのような対応(支援・指導)をするか」については、教育学の専門家であり教育現場にいる教職員の合議体の決定は、きっと正しいこと。少なくとも、裁判所が事後に見ても、「その時点では、正しい判断だった」と言ってもらえるはずであること。
  12. とはいえ、できるだけ正しい判断をするため、判断の前提となる事実認定については、可能な限り弁護士の意見を参考にしてほしいこと。
  13. 弁護士と教職員がチームを組んで、役割をシェアし、知恵と力を合わせて、学校からいじめをなくしていきましょう。
 
今回の研修の講師をしたことで、改めて、教育関係者の方と力を合わせることで社会からいじめをなくさなければならないし、なくすことができると思いました。
 
今後も、社会からいじめをなくすため、いじめ防止授業や講演(研修の講師)などの活動を続けていきたいと思います。